第3回−十文字えいちゃん



第3回
十文字えいちゃん
「魔法の手」


 えいちゃんの手は魔法の手だ。

 えいちゃんの手は、どんな廃材も『芸術品』に変えてしまう不思議な手。サッシ職人のえいちゃんは、木や竹を上手に組み合わせ、なんでも器用につくってしまう。
 エコプチにはそんな職人の『芸術品』が数多くあるが、その中でももっとも活躍しているのは回転テーブルだ。

「中華料理屋にあるような回転テーブルがあったらいいなあ」

仲間のひとりが言ったところ、電線を巻く廃材を利用して、立派な円卓テーブルをつくってくれた。2段の円卓の上段には車がついていて、まわすことができる。円卓は会議や雑談など、エコプチの集会所としていつもにぎわっている。
また、物置としてつかっている小屋も、ドア・窓など工事現場で不要になったものをつかって作ってしまった。小屋の床は、なんとフローリングだ。そのほかにも裏のドア、太陽光噴水など、日々作品は増えている。

 えいちゃんが「エコプチな人」になったきっかけは交通事故のリハビリだった。
 エコプチの近所に住むえいちゃんは、エコプチが開設される頃、事故で両足を骨折してしまっていた。みんながわいわい楽しくやっているのを見て参加したかったが、足の事が不安だったという。はじめは遠慮がちだったが、
 「松葉杖を持つ代わりに、スコップを持つようになった」
という。畑でのリハビリは効果絶大で、あっという間に元気を取り戻した。

 またえいちゃんは、キウイの面倒も見ている。とはいえ、キウイの栽培はまるで素人。「キウイの育て方」という本をボロボロになるまで読みながら試行錯誤したお陰で、キウイのつるは大きく伸び、涼しい風を作る天然クーラーとなった。そして3年目に800個の果実となって現れた。キウイは雌雄別れていて、5月に受粉作業を行うが、

「受粉ちゅーのはエッチなやつがやるとうまくいくんだ」

とオヤジギャグを飛ばす。

 施設のゴミ出し、ビオトープの管理、キウイの世話など、陰日なたなく黙々と仕事をこなすえいちゃんは、縁の下の力持ちだ。
 
「ここはみんな仲がいいからな、それが自慢なんだ」

 魔法の手が生み出す、次の芸術作品が楽しみだ。



日時 2005-12-30 15:35:40
環境コラム: エコプチな人々
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