[enthopy4] エントロピーって何? その4


八木澤秀記 高千穂大学 理学博士
物理学から見るエネルギー問題・環境問題について研究している。自宅の軽井沢では農業を営み、自然との調和したライフスタイルの実践をしている


石炭は露天掘りができれば楽だが、地中深くにある石炭は人が中に入って掘り出さなければならない。そのために常に落盤事故、火災事故、一酸化中毒事故の恐怖に曝され、実際に悲劇は繰り返されてきた。
現在は夕張メロンで知られる夕張は炭坑の町として知られていた、それも事故の悲劇が繰り返された町として。 父親、息子、孫を事故で失った家族も珍しくはなかった。 その町の中を通る通りはいつしか「鶯通り」と呼ばれるようになった。 死者の野辺送りで家族の号泣と嗚咽が絶えることが無かったことに由来し、のどかな響きの名とは逆の阿鼻叫喚の通りだった。
一酸化中毒に対処する方法は無い。まさかと思うだろうが本当にそうなのだ。 ガスマスクはあるが全く使い物にならない。このマスクは一酸化炭素を酸化させて二酸化炭素に変える装置、即ちヒーターの原理そのものだから口元で強烈な日を炊くに等しい。皆がマスクを外して死んでいると言う。火を吸い込んで死ぬか、一酸化炭素中毒で死ぬかの選択をさせているだけに過ぎない。
 
ますます深くなる一方の炭坑での採掘はそれだけ犠牲も大きくなり、夕張は閉鎖され夕張メロンの産地に生まれ変わった。 日本の炭坑は、数年前には全て閉山された。 事故の悲劇と補償は直接の原因ではない。 石油との価格競争に負けたためである。
石油採掘は石炭採掘と異なり、人が地下に入り込まなくてもパイプを差し込んで圧力をかければ噴出してくる。 精製によってガソリン、ディーゼル、灯油などの用途に分けられ、タンクに入れ車で輸送したり、パイプラインで遠隔地に運べる。航空機燃料や自動車燃料には極めて便利で、石炭にはこの利点がない。引火性、爆発性があって危険だが、それは逆に言えば燃料価値の高さを物語る。 簡単に点火しないようでは簡便な動力源にはならない。即ち、

『石油に代わるエネルギー源は無い。』 

後で述べるが原子力も、ソーラーもその他も石油に到底代われるものではない。代われる物があるなら、米英が世界中から湧き上がる非難の嵐の中をイラクに攻め込む必要はないはず。
エネルギー、物質を環境から収奪した結果、エントロピーが増大し、繁栄が終焉する。米英の侵略は、その終焉を先延ばしにするための必死のあがきに他ならない。 テロ防止、民主化はお粗末な言い訳でしかないことが判るだろう。米英がイラクに攻め入ったのは大量破壊兵器が有るからではなく、無いことを掴んだからだと推察する。身勝手な自己のみの繁栄を追及するかぎり、また石油が地球上で偏在する限り「悪の枢軸国」のアラブ侵略は絶対に終わらない。 世界最大の石油埋蔵量を持つサウジアラビアが標的になるのは時間の問題であろう、良識あるアメリカの指導者が現れなければ
(続く)




日時 2003-4-15 13:00:51
環境コラム: エントロピーで見る環境問題
この記事が掲載されているURL: http://www.greenproject.net/modules/wfsection/article.php?articleid=38