VOL10.万が一の事態に備える
| | ヒロ ヒラタ エコプチテラス管理人。最近はボランティアが自立してやることがなく、もっぱら回転テーブルでお茶を飲んでいる。エコプチが縁で飼われたモカは、主人より餌をくれるスタッフになついている。 ▽個人サイト:森の語り部たち |
10月23日に新潟県中越地方を襲った地震は、阪神淡路大震災以来の震度7を計測し、3週間たった今も復旧のめどが立つどころか、土石流発生の心配などますます被害が拡大している。地震発生時、私は東京にいたが、東京も数回にわたりかなりの揺れを感じた。 避難している方々のことを思うと本当に心が痛む。少しでも何か出来ないかと考え、エコプチ訪問者に義援金寄付のお願いをはじめた。被災者の方々や現地で活動するボランティアの役に立てば幸いだ。 悲惨な現状にあって、近所の方々がお互いに助け合う姿や、全国から続々と集まるボランティアの姿には胸が熱くなる。みんなで力をあわせて困難を乗り切ろうという姿は、世の中まだ捨てたものではないと、一筋の希望の光のように感じる。ちょうど10年前におこった阪神淡路大震災での支え合いがきっかけで現在のNPOへの大きな流れができたように、苦しい状況の中でも人々が支えあい、なんとか苦難を乗り越えてもらいたい。
新潟と同規模の地震がもしも東京で起こったら、その被害はとてつもないものになるだろう。万が一に備えるためにも対応策を頭の片隅に入れておく必要がある。実際、エコプチテラス付近の住民が避難する総合体育館までは歩いて2キロほどあり、特に高齢者などは避難場所までたどり着けない可能性がある。また家屋は無事だがライフラインが絶たれた場合、都市部独特の住民ニーズがあるのではないかと考えている。 震災が起こった場合、エコプチテラスはまず近隣住民のための緊急トイレの設置を行うことになるだろう。都市部には土がなく、一度下水道が分断されるとトイレの処理ができない。エコ農園に順番に穴を掘り、エコプチにある鉄パイプや温室を利用した簡易トイレを設置すれば、500人が10日間しのげることができるだろう。また、雨が降らなければキウイ棚にブルーシートをかぶせて2〜3日の簡易避難場所も作れるし、ドラム缶を利用して雨水などをろ過して沸かし、味噌汁をつくることもできる。2〜3日間だけしのげれば、救援物資やボランティアがやってくるので、それまでのつなぎとして機能するだろう。幸いにエコプチにはすべての道具が準備されている。 しかしそれ以上に機能するのはグリーンプロジェクトの組織そのものではないだろうか。我々は「誰が、どんな技術を持ち、どうやって役割分担すればどう動けるか」を「日常的な活動」の中でお互いが理解しており、30人前後のスタッフがあうんの呼吸で動ける体制ができている。被災地のど真ん中で支援組織をつくることができれば、ひとりでも多くの方をサポートできるだろう。機動力とスピードを備えた組織が瞬時にできることは心強い。今年は防災訓練などを行い、災害に備えた具体的かつ本格的な準備を計画している。
新潟の震災被災者の方がテレビのインタビューに答えている姿があった。 「色々な人が私を支えてくれる。家もなにもなくなったけれど、みんなの心があったかい」 人が困ったとき、それを「放っておけない」と手を差し伸べるのが人情だ。お互いが関わりあい、支えあって生きていることを実感するとき、私たちはなぜかほっとした気持ちになる。私たちはいつも誰かに支えられて生きている。ただそれが当たり前になっていて、そのありがたさに気づかないのだ。 震災に限ったことではなく、私たちはもっと普段から支えあいの仕組みの大切さに気づくべきではないだろうか。日々の生活の中でも困っている人はたくさんいるし、手を差し伸べるのを待っている。町会の活動やNPOへボランティアとして参加するなど、どんな小さなアクションであっても、支えあいの仕組みに参加する価値はあるだろう。「放っておけない」という気持ちがボランティアの芽生えであり、「支えあいの仕組み」がNPOだ。地域にNPOが多数あることは、それ自体が地域のセーフティネットになりうる。 昔の日本は隣近所の付き合いがもっと密接で、お互いを助け合っていた。そうしなければ生きていけない社会であったのは事実なのだが、すべてが便利になった現在の豊かさとは質の違う豊かさが昔はあったような気がする。それは人々の支えあいといった目に見えないが、やさしくてあたたかい連帯感ではなかっただろうか?
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日時 2004-11-3 14:48:45 環境コラム: GP流NPOマネジメント この記事が掲載されているURL: http://www.greenproject.net/modules/wfsection/article.php?articleid=67
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