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 環境エトセトラ : オゾン 大気の物語
投稿者 river-rat 投稿日時 2004-9-12 21:42:33 (1417 ヒット)        印刷用ページ

ヒロ ヒラタ エコプチテラス 管理人

カエルが消えた
関東で、トノサマガエルが消えたという記事を目にして大変驚きました。トノサマガエルは子供のころ、どこでも見られたもので、カマキリやジグモとともに私の遊び道具でした。たしかに最近、家のまわりでトノサマガエルは目にすることがありません。田んぼがなくなったせいだと思っていましたが、記事の内容はどうやらそうではありません。「オゾン層破壊との関連が予想される」とあったのです。

カエルに何が起こっているのか
カエルをはじめ、ヤモリやサンショウウオなど両生類の激減が、世界中で報告されています。両生類は皮膚がむきだしなので、温度・湿度の変化によわく、化学物質などの影響をまともに受けてしまう生き物です。オゾン層の破壊の影響も一番はやく受けているのではといわれています。オレゴン州では、オゾン層の破壊により、有害紫外線が卵に影響を与えたという報告がされました。日本でも、青梅市に住むフロンガス回収業の宇津木浩一さんが、実験したところ、紫外線の増加がカエルのふ化に悪影響を与えることをつきとめました。トノサマガエルは池や水田の浅いところに卵を産みます。浅いところは太陽の光が一番あたるので、紫外線を浴びた卵が死んでしまうと予想されています。

オゾン層はこうしてつくられた
オゾン層はもともとこの星には存在しませんでした。オゾン層は私たちの先祖である生き物が、陸上で生きていくためにつくりあげたものなのです。オゾンの形成には生命の営みが大きくかかわっているのです。

生まれたころの地球の大気は、窒素・アルゴン・二酸化炭素などでした。陸地には有害な紫外線が降り注いでおり、生き物は紫外線の届かない海の中でしか生きられませんでした。海の中の生き物、植物たちは光合成により二酸化炭素から酸素をつくり始めました。ぷくぷくと酸素の泡が海面に昇っていき、酸素が生まれました。十分な酸素がつくられるようになって、オゾン層ができました。生き物が陸上に上がれるようになるまで、実に35億年もの時間がかかりました。オゾン層は上空20〜30キロに薄く広がっており、1気圧換算ではたった3ミリの厚さです。まさに命を守るシールドなのです。

オゾン層が壊れると
オゾン層は、生き物に有害な紫外線をさえぎる役割を果たしています。オゾン層がなければ、あらゆる生命は陸上で生活できません。オゾン層が破壊されるのに比例して、皮膚がんや白内障や免疫障害が増えます。植物が育たなくなり、食糧問題が深刻になります。

オゾン層破壊の原因―フロン
フロンは冷蔵庫やクーラーのガス、発砲ウレタン、スプレー缶などでつかわれています。フロンはもともと自然界にはなかった物質です。1928年に発見され、当時「夢の化学物質」と呼ばれていました。フロンとオゾン層破壊の関連性をはじめに発見したのはアメリカの科学者ローランド博士で、20年前にこのような警告を発しました。「10年後、オゾン層に穴が開く。20年後人体に影響が出る。30年後取り返しのつかない事態になる」いまのところ、経過は博士の予測どおりとなっています。

フロンは化学的には安定している物質ですが、これが上空へ運ばれて、太陽光によってオゾンと反応するとオゾンを破壊します。オゾン層が薄くなると紫外線が増えて、皮膚がんが増加します。

また、南極の初春には「極夜渦」とよばれる強い上昇気流が発生し、地上付近のフロンをオゾン層周辺へ吹き上げます。そのため、オゾン層が極端に薄くなる「オゾンホール」とよばれる穴がみられるようになりました。

オゾン層破壊の実態
国連環境計画(UNEP)やNASAによると、2020年には最大3分の2のオゾン層が破壊されると報告しています。日本上空ではすでに平均10%のオゾン層が減り、1996年4月の北海道では30%もの減少が国立環境研究所によって確認されました。オゾン層が1%減少すれば、紫外線Bが2%増え、DNAが3%損傷を受けます。日本でもすでに、紫外線Bの増加に比例して皮膚がんが増えていると医学界から報告されています。

私たちにできること―特に子供を持つご両親へ
最近は天気予報でも紫外線情報がだされています。オーストラリアでは10時から3時は野外活動を控えており、家庭でも「ノーハット、ノープレイ(帽子をかぶらないで遊ばない)」というしつけが行われています。山梨の小・中学校ではプールに紫外線防止の屋根が取り付けられています。「日焼けは健康にいい」という状況ではもはやありません。夏の晴れた日の日光浴時間は、関東で20分といわれています。長袖を着る、日やけ止めクリームを塗る、帽子をかぶるという習慣を身に付けましょう。
また、フロン製品を買わない、使わないという運動も有効です。日本にはフロン放出規制がありますが、企業に義務や罰則はありません。実質、野放しの状態が続いています。たとえば、自動販売機が新機種に切り替えられるとき、大量のフロンが大気に放出され、オゾン層破壊の一因になっています。自動販売機は本当に必要でしょうか?ヨーロッパではほとんどみかけません。
オゾン層の破壊は、フロンの放出から15〜20年後に起こるといわれています。つまり、いま放出したフロンガスがオゾン層に到達するまでに、それだけの時間がかかるということです。未来への負の遺産を残さないよう、私たちがいま取り組むべき問題なのです。


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